歌が生まれる場所──小豆沢あずき、声で描く世界。

カテゴリ: アーティスト
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リアルとバーチャルの境界を越えて、響く“芯のある歌声”。

VTuber・アーティストとして活動する小豆沢あずきさん。
活動の拠点はbilibiliとYouTube。オンラインでの歌配信を軸にしながら、近年はリアルのステージにも進出し、その芯のある歌声で多くの人を惹きつけています。
そんな彼女が音楽活動を始めたきっかけ、そして今感じている「歌うこと」への想いを語ってくれました。

活動を始めたきっかけ

『活動を始めたきっかけっていうのが、友達に“VTuberっていうのがあるんだよ”って言われて、「よかったら一緒にやらない?」って軽い感じで誘われたのがきっかけで。』

最初は「ふわっと歌をやろうかな」という軽い気持ちで始めたという。
その後、仲介会社を通じて声がかかり、bilibiliで配信を始めたところで大きな反響があり、一躍注目を集めた。

『bilibiliに行ったら一回ドカーンってバズった時があって、そこからずっと歌って配信を続けている感じですね。』

昨年の冬には、Torimochiライブに出演。これが初めての現地ライブだったという。

『最初のライブは緊張しすぎて何も覚えてないくらい(笑)。でもそこから“ライブって楽しいな”って思って。度胸試しに近場のイベントにも出てみたり、リアルでもシンガー募集のイベントに積極的に応募しています。今は2.5次元として活動している感じです。』

活動スタイルの変化

当初は「歌を届ける」ことが中心だったが、近年は“どうすればもっと楽しんでもらえるか”を考えるようになったという。

『最近まではただ歌ってるだけみたいな感じだったんですけど、今はバルーンアートを取り入れたり、ライブ中に暗号を仕掛けて“見つけた人に特典を渡す”みたいな遊びも入れてます。ただ歌うだけじゃなく、エンタメとしての楽しさも届けたいんです。』

配信も“距離の近さ”を意識して変化している。

『以前は歌だけで雑談も少なかったんですけど、今はコメントや反応を大事にして、ファンのことをもっと知るようにしています。そのおかげで配信も自然と長く続けられるようになったし、心から楽しめるようになりました。』

リアル × バーチャル活動

現在の小豆沢あずきさんは、まさに“2.5次元”の活動を体現している。

『一応VTuberとして「2.5次元V」っていうことにしてます。リアルのライブハウスのイベントとか、DJイベント、路上ライブやお祭り・野外ライブにも“小豆沢あずき”名義で出演してます。それと並行して、もう一つ“人間の形”では出演せずに、作曲家さんと一緒にやってる「まつりごと」というグループもあって。そっちは動画メインで、ライブ活動はしてないです。』

2つの活動軸があるからこそ、“どちらをどう表現していくか”は今も模索中だという。

『今はまだその辺がふわふわしてて、もしかしたら将来的に「まつりごと」は名義を変えるかもしれません。リアルとバーチャルの線引きが難しくて、どう持っていこうかなって考えてるところです。』

VTuberとしてのキャラと、リアルでの表現の切り替えについても悩みはある。

『前まではリアルはかっこよく、Vの方は明るく元気に!って分けてたんですけど、結局名義が同じだから、そこも悩んでて。VTuberのライブは「みんなで楽しく!」って方向で固まってきたけど、リアルの方はまだ模索中です。』

『リアルのイベントって、シンガー系・DJ系・野外フェス系とか、色が全然違うんですよ。だからイベントごとにちょっとキャラを変えてて。今のところリアルの私は“まだ色が薄い”というか、これから形を探していく段階です。でも“みんなで楽しむ”っていう気持ちはどっちも一緒。今はありのままの形で頑張ってます。』

得意な楽曲と歌へのこだわり

『得意なのはアップテンポとバラードです。アップテンポは「唱」みたいなテンション高めの曲が得意。ああいう曲は歌い込めば歌い込むほど強くなるんですよね。完成するまでに時間がかかるけど、仕上がった時の爽快感がすごい。』

『ライブだと「God knows」みたいに勢いのある曲が特に得意で受けもいいです。一方で、失恋ソングのバラードも得意。悲しい感情を込めやすいんです。逆に「マリーゴールド」とか「栄光の架橋」みたいな、感情の起伏が少なく平坦になりがちな曲は苦手です。』

感情表現の幅広さは、カバーやコラボでもよく見られる。
『メフィスト』のようにクールな楽曲から、『2時間だけのバカンス』のような繊細なバラードまで、彼女の声色は自在に変化する。

おすすめ楽曲:1st EP『千変万化』より『カラビナ』

おすすめの1曲として挙げてくれたのは、ファーストEP『千変万化』に収録されている『カラビナ』。

『「カラビナ」は自分に一番合ってる曲かなと思ってます。今、9月からDAMにも入ってるので、ぜひ聴いて、歌ってほしいです。』

制作を担当したのは、コンポーザーのZeekaさん。
あずきさん自身がネットで曲を探していた際、偶然出会い、“一目惚れ”したことがきっかけだった。

『Zeekaさんの曲を初めて聴いたとき、本当に刺さって。「こんないい曲を作る人がいるんだ!」って感動して。いつか依頼したいと思って、まずはその人の曲を歌ってみたを出したんです。そこから少しずつやりとりをして、CDを出すタイミングで正式にお願いしました。』

曲の方向性についても、自身のイメージをしっかり伝えたという。

『Adoさんの「唱」とAyase×R-指定さんの「飛天」を組み合わせた感じの曲がいい、ってお願いしたんです。そしたらもう解釈一致すぎて、「こういう曲が歌いたかったんだよ!」ってなりました。』

特に歌い方へのこだわりも強い。

『早口のところを“かっこよく”歌うために、シーンを意識して歌いました。ベチャッとならないように、英語っぽい発音を意識して軽やかに。のっぺり歌わないように工夫しました。』

ライブで披露するたびに“成長していく曲”でもあるという。

『毎回ライブに来てくれる方から「今回も良くなってたね」って言ってもらえるのが嬉しくて。まだまだ磨かれる曲なので、今後もどんどんブラッシュアップしていきたいです。』

さらに『カラビナ』をきっかけに、Zeekaさんとのユニット「まつりごと」も誕生。

『この曲がなかったら、そっちの活動もやってなかったと思うくらい、ターニングポイントになった曲です。』

1st EP『千変万化』ジャケット

1st EP『千変万化』

  • カラビナ
  • 水行線
  • 色が失くなる二分前
  • Labyrinth

1st EPに収録されたその他の楽曲

『水行線』
『高校時代にバンドを組んでた友達(ベーシスト)が作ってくれた曲です。最近のVTuberやアニソン界隈では珍しい、爽やかなバンドサウンドになってて、チャットモンチーみたいに歌ってって言われ、明るく元気に歌いました。』
制作はギリギリのスケジュールの中で行われたが、完成度は高い。
『レコーディングも1日で覚えて1日で録ったんですけど、形的にはすごくまとまってて、誰が聴いても良いって言ってもらえる曲になりました。』

『色が失くなる二分前』
Zeekaさんの楽曲を唯一カバーした1曲。
アルバムの中でも静かな熱を持つ、エモーショナルな楽曲だ。

『Labyrinth』
『yasuha.さんに作ってもらいました。小豆沢あずきになる前からお世話になってた方で、ご縁があって再び一緒に作ることになったんです。歌詞は私が書いて、曲はyasuha.さん。』
制作の裏には、少しドラマチックなエピソードも。ファンとの関係から生まれた別の曲をきっかけに、複雑な経緯を経て再びyasuha.さんと再会。そこから新たに『Labyrinth』が生まれた。

『みんなで頑張って作った、すごく思い入れのあるアルバムです。いい人たちに囲まれてできた“チームの作品”になりました。』

これからの目標・読者へのメッセージ

『今後の目標は、全国を回って歌うことです。大きなホールもいいけど、キャパ50人くらいの場所でも、そこに50人来てくれたら本当に嬉しい。そういうところで歌いながら、各地をまわって、その土地の名物を食べたり観光したり、日本一周するのが夢です。』

『Torimochiライブが終わったあと、「みんなの住んでるところにも行きたいな」って思うようになりました。遠くて来られない人や学生さんも多いと思うので、私の方から会いに行けたらいいなって。』

読者へのメッセージも忘れない。
『ここまで読んでくれてありがとうございます。VRChatなどでもたまに路上ライブをしたり、イベントに出演したりしています。遠くてリアルでは会えない人も、バーチャルの世界で遊びに来てもらえたら嬉しいです。』

✨ 編集後記(ライターより)

軽い気持ちで始めたVTuber活動が、bilibiliでの大きな出会いを経て、今では“リアルとバーチャルを行き来するシンガー”へ。
歌に真っすぐ向き合いながらも、楽しさや遊び心を忘れない小豆沢あずきさん。
EP『千変万化』での『カラビナ』を中心に、新たなユニット「まつりごと」の活動も始まり、これからさらに表現の幅を広げていくだろう。
全国ツアーや各地でのパフォーマンスなど、彼女らしい自由で鮮やかな挑戦が、より多くの人に届くことを期待したい。

小豆沢あずきの公式リンク

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